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DISPATCHED WORKERS

派遣社員が事故を起こしたら・けがをしたら

人手の確保のために派遣社員を受け入れている会社は少なくありません。厚生労働省の集計(速報)では、令和7年6月1日現在の派遣労働者数は約201万人で、このうち製造業務に従事していた方は約43万人でした。一方、令和7年に労働災害で休業4日以上のけがをした派遣労働者は6,809人、亡くなった方は12人でした(確定値)。

派遣社員をめぐる事故では、「責任を負うのは派遣元か、受け入れている派遣先か」が最初の問題になります。契約書の取り決めと、法律上の責任の所在は、必ずしも同じではありません。このページでは、事故が起きたときに誰がどの責任を負うのか、労災保険と報告の手続きはどうなるのか、受け入れる会社が日頃から行うべきことは何かを、法令と国の資料をもとに整理しました。

数字で見る派遣社員と労働災害

派遣労働者数約201万人(令和7年6月1日現在・速報)。このうち製造業務に従事した方は約43万人
死傷者数休業4日以上は6,809人(令和7年・確定値)。全労働者では135,333人
死亡者数12人(令和7年・確定値)。全労働者では700人
業種別の集計派遣先から提出された報告を集計した数(令和7年・計5,883人)では、製造業が2,691人で最も多く、全体の約46%を占めます。次いで商業836人、陸上貨物運送事業828人

出典:厚生労働省「労働者派遣事業の令和7年6月1日現在の状況(速報)」、「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」別表8。死傷者数・死亡者数の全産業の数は派遣元から提出された報告を、業種別の数は派遣先から提出された報告を集計したもので、集計の元が異なるため数が一致しません。

事故が起きたとき、誰が責任を負うのか

派遣社員が第三者に損害を与えた場合と、派遣社員自身がけがをした場合とでは、責任と手続きの考え方が違います。

派遣社員が第三者にけがをさせた・物を壊したとき

来客・通行人・取引先の物への事故

  1. 指揮命令している会社の責任
    民法第715条は、ある事業のために他人を使用する者は、その被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています。派遣社員は派遣先の指揮命令のもとで業務を行うため、受け入れている会社がこの責任を問われることがあります。
  2. 本人の責任も残る
    故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した人は、それによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法第709条)。会社の責任とは別に、事故を起こした本人が責任を問われることもあります。
  3. 派遣元の責任は別の話
    派遣元に法律上の責任が生じるのは、人選に落ち度があった場合など限られた場面と考えられています。契約で「派遣元が負担する」と取り決めていても、それは会社どうしの約束であり、被害を受けた方に対する法律上の責任の所在とは別の問題です。
  4. 契約書を先に確認する
    労働者派遣契約には、損害の負担に関する条項が置かれていることがあります。事故が起きてから慌てないよう、受け入れる前に内容を確認し、社内で共有しておきます。

派遣社員が働いている最中にけがをしたとき

労災保険の手続きと会社の責任

  1. 救護と派遣元への連絡
    厚生労働省のマニュアルでは、まず被災者の救出を行い、あわせて速やかに派遣元へ連絡すること、家族への連絡などは派遣元と派遣先の双方が協力して対処することが重要だとされています。
  2. 労災保険は派遣元
    労災保険は、雇用関係のある派遣元に適用されます(昭和61年6月30日付け基発第383号ほか)。保険給付の請求では、派遣先の証明や書類が必要になります。
  3. 労働者死傷病報告は双方が提出
    派遣社員が労働災害で死亡または休業したときは、派遣先と派遣元の双方が、それぞれの所轄労働基準監督署長に労働者死傷病報告を提出しなければなりません(労働安全衛生規則第97条)。派遣先は、提出した報告(休業4日以上のもの)の写しを派遣元に送り、派遣元はそれをもとに自社分を作成します。
  4. 損害賠償を求められることもある
    労災保険の給付は、損害のすべてを埋めるものではありません。派遣元は労働契約の当事者として、労働者が安全に働けるよう配慮する義務を負います(労働契約法第5条)。派遣先も、実際に指揮命令して働かせている以上、安全への配慮が足りなかったとして損害賠償を求められることがあります。
  5. 原因の究明と再発防止
    厚生労働省のマニュアルでは、派遣先は自社の労働者が被災した場合と同様に、速やかに災害調査(発生状況と災害原因の究明)を開始するとされています。

安全と健康を守る役割の分担

危険を防ぐ措置機械や設備による危険、作業方法から生じる危険、原材料や粉じんなどによる健康障害を防ぐ措置は、派遣先が事業者としての責任を負います
管理体制安全管理者や作業主任者の選任は派遣先。総括安全衛生管理者・衛生管理者・産業医・衛生委員会などは派遣先と派遣元の双方。選任や設置が必要になる人数を数えるときは、派遣社員も派遣先の労働者として数えます
安全衛生教育雇入れ時の教育は派遣元。作業内容を変更したときの教育と、危険有害業務に就かせるときの特別教育は派遣先
健康診断一般健康診断は派遣元。有害な業務に関する特殊健康診断は派遣先。派遣先は、その結果を記録した書類を派遣元に送ります
労働時間労働時間・休憩・休日など、具体的な就業に関する事項は派遣先。労働時間や休日の枠組みの設定は派遣元

出典:労働者派遣法第45条、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、「製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル」

受け入れる会社が日頃からできること

1

契約にない業務をさせない

現場の管理者は、労働者派遣契約で取り決められた業務内容を承知し、契約外の業務をさせないようにしなければならないとされています。現場の都合で作業を広げてしまわないよう、あらかじめ指揮命令者に周知します。

2

受け入れ時の教育を省かない

作業内容を変更したときの安全衛生教育は、雇入れ時の教育と同じ項目について行います。派遣社員は職場環境や作業方法に不慣れな部分も少なくないため、安易に省略しないことが求められています。

3

危険有害業務は特別教育を先に

一定の危険有害業務に就かせるときは、あらかじめ必要な知識と技能について特別教育を行います。受講料や旅費などの費用は、派遣先が負担するのが適当とされています。

4

自社の安全衛生活動に加える

整理・整頓・清掃・清潔(4S)、危険予知(KY)活動、ヒヤリハットの洗い出しなど、自社で行っている活動に派遣社員も参加できるようにします。雇用形態の異なる方も含めた全員参加によって効果が期待できるとされています。

5

リスクアセスメントの対象に含める

危険性または有害性等の調査(リスクアセスメント)を行い、その結果に基づいて、派遣社員を含む労働者の危険や健康障害を防ぐ措置を講じるよう努めます。

6

事故が起きたときの手順を決めておく

救護、派遣元への連絡、労働基準監督署への報告、原因の調査と再発防止までの流れを、あらかじめ決めておきます。外国人の派遣社員に教育を行うときは、母国語の教材を活用することが示されています。

対策を徹底しても、事故をゼロにはできません

教育や設備の対策を尽くしても、不慣れな作業や一瞬の行き違いから事故が起きることはあります。受け入れている派遣社員のけがや、そこから生じる損害賠償に備える方法のひとつが保険です。

よくあるご質問

Q. 派遣社員がお客さまの物を壊したら、派遣会社が弁償してくれますか?

A. 労働者派遣契約の取り決めによりますが、法律上の責任とは別の問題です。派遣社員は派遣先の指揮命令のもとで業務を行うため、第三者に対する使用者としての責任は、受け入れている会社が問われることがあります(民法第715条)。受け入れる前に、契約書の損害の負担に関する条項を確認しておくことが大切です。

Q. 派遣社員がけがをしたとき、労災保険はどちらの会社のものを使いますか?

A. 労災保険は、雇用関係のある派遣元に適用されます(昭和61年6月30日付け基発第383号ほか)。ただし労働者死傷病報告は、派遣先と派遣元の双方が、それぞれの所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません(労働安全衛生規則第97条)。派遣先は、提出した報告(休業4日以上のもの)の写しを派遣元に送ります。

Q. 安全管理者などを選ぶときの人数に、派遣社員も入りますか?

A. 入ります。厚生労働省のマニュアルでは、選任または設置の要件となる労働者数について、派遣労働者は派遣先の労働者としてもカウントされ、派遣先が雇用する労働者と派遣労働者の合計になるとされています。

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