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SLIP & FALL

店内でお客さまが転倒・けがをしたら

雨の日の入口、こぼれた飲み物や食べ物で濡れた床、見落としやすい段差など、店内には転倒の原因が潜んでいます。東京消防庁の救急搬送データ(令和6年)では、日常生活の事故で救急搬送された人のうち約6割が「ころぶ」事故で、その発生場所では「店舗・遊技施設等」が6,381人でした。

お客さまがけがをすると、お店は治療費などの賠償を求められることがあります。一方で、事故の状況によってはお店の責任が否定されることもあります。このページでは、店内で転倒事故が起きたときの対応の流れ、責任の考え方、裁判例、そして日頃からできる対策を、公的な資料をもとに整理しました。

数字で見る転倒事故

「ころぶ」事故の救急搬送98,243人(日常生活の事故による救急搬送の約6割)
発生場所が「店舗・遊技施設等」6,381人(6.5%)
65歳以上の「ころぶ」事故73,500人。そのうち40.1%が中等症以上
(参考)従業員の労働災害令和7年の労働災害で最も多い事故の型は「転倒」で37,195人。小売業では6,132人、飲食店では1,862人

出典:東京消防庁「救急搬送データからみる日常生活事故の実態(令和6年)」(東京消防庁管内・稲城市と島しょ地区を除く)、厚生労働省「令和7年 労働災害発生状況」

転倒事故が起きたとき、お店に起きること

事故直後の対応と記録が、その後のお客さまとの話し合いを左右します。

お客さまが店内で転倒・けがをしたとき

床の水濡れ・落ちた食べ物・段差など

  1. 救護と状況の記録
    けがをしたお客さまの救護を優先し、必要に応じて救急車を呼びます。転倒した場所の床の状態、照明、注意表示の有無などを、写真やメモで記録しておきます。
  2. お客さまへの対応
    お見舞いと状況の説明を行い、治療費などのご相談を受けます。事実関係を確認しないまま、その場で責任の範囲を約束しないようにします。
  3. お店の責任の考え方
    床や設備の管理に問題があって事故が起きたときは、お店が損害を賠償する責任を負うことがあります(民法第709条)。建物の設置や保存に欠陥(瑕疵)があった場合(民法第717条)や、従業員の不注意による事故で会社が使用者として責任を負う場合(民法第715条)もあります。
  4. お客さまの不注意も考慮される
    被害者にも過失があったときは、裁判所はそれを考慮して賠償額を決めることができます(民法第722条第2項)。

裁判例に見る判断の分かれ方

スーパーのレジ前通路に落ちていたかぼちゃの天ぷらでお客さまが滑って転倒。東京地方裁判所(令和2年12月8日判決)は、店に安全管理義務違反があるとして責任を認めた(お客さまの過失は5割を下回らないとして減額)。しかし東京高等裁判所(令和3年8月4日判決)はこの判断を覆し、お客さまの請求を全面的に退けた
ホテルの朝食会場濡れた床で宿泊客が転倒。東京地方裁判所(令和4年9月29日判決)はホテルの責任を認め、宿泊客の過失による減額はしなかった

個別の事案についての判断であり、一般化はできません(国民生活センター「暮らしの判例」の解説より)。

日頃からできる対策

1

こまめな安全点検

消費者庁は、売場のスタッフが定期点検だけでなくこまめに安全点検を行い、不具合を見つけた場合には迅速に処置することが重要だとしています。

2

床の水濡れ・汚れをすぐに取る

整理・整頓・清掃・清潔(4S)を徹底し、床の水濡れや油汚れを取り除きます。厚生労働省が従業員の転倒防止として示している取り組みは、お客さまの安全にも役立ちます。

3

雨の日の入口対策

雨の日の入口は、床が濡れて滑りやすくなります。マットの設置やこまめな拭き取りで、入口付近の水濡れを防ぎます。

4

照明・手すり・滑り止め

足元が見えるだけの明るさを確保し、段差や傾斜のある場所には手すりや滑り止めの設置を検討します。

5

危険な場所を「見える化」する

段差や清掃中の場所には注意表示を出し、危険箇所がひと目で分かるようにします。

6

事故時の手順と日々の記録

救護、記録、責任者への報告の手順を決めておきます。点検や清掃の記録を残しておくことも、事故後に事実関係を確認する手がかりになります。

対策を徹底しても、事故をゼロにはできません

点検や清掃を徹底していても、混雑時の一瞬の水濡れや、お客さまが持ち込んだ物など、防ぎきれない原因もあります。お客さまへの賠償やお見舞いの費用に備える方法のひとつが保険です。

よくあるご質問

Q. お客さまが店内で転んだら、必ずお店の責任になりますか?

A. 必ずではありません。床や設備の管理に問題があったか、お客さま自身に不注意がなかったかなどによって判断が分かれます。同じ事案で、地方裁判所が店の責任を認め、高等裁判所がそれを覆した例もあります。

Q. お客さまにも不注意があった場合は、どうなりますか?

A. 被害者にも過失があったときは、裁判所はそれを考慮して損害賠償の額を決めることができます(民法第722条第2項、過失相殺)。

Q. 転倒事故が起きたら、何を記録しておけばよいですか?

A. 事故の日時と場所、床の状態(濡れ・汚れ・段差)、照明や注意表示の有無、目撃した人、当日の点検や清掃の記録などです。後から事実関係を確認するときの手がかりになります。

参考資料

このページの内容は2026年9月時点の情報をもとに、株式会社保険企画が作成しています。

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